小説「コレヤ!」−24

大切な話があると新本に居酒屋「鈴本」に誘われたのは小川雄太の事件の二日後であった。立て続けに新本からの誘い、ついこないだは俺の方が発信源となり新本を誘ってはいた。前回のラーメンとは違い大切な話があるという条件もあった。俺は自分の特殊能力のこともあり新本の誘いを乗り鈴本に向かった。鈴本に入り俺が驚いたのは遅刻するのが当たり前の新本の方が先にきて俺を待っていた。

「遅いぞ、坂本」と店に入った俺を新本は手招きをして呼んだ。

「遅いも何も時間通りだろ」と俺は言い新本の向かいに座る。

「まあ、いい。飲み物は何にする?」と言う新本の前には手の付けられていない生中があった。「最初は俺も生中でいいよ」というと新本が店長に生中を頼んでくれた。

俺の生中がきてから乾杯をしてビールを半分飲んでから肉じゃが、厚揚げ焼き、枝豆、冷奴、お新香、串盛り合わせ、野菜サラダなどを注文する新本。今日の新本は手際が早かった。

「どうした、大切な話って」とスピードメニューの冷奴と枝豆をつまみながら俺は新本に聞いた。

「坂本も特殊能力を手に入れたのだろ?」

「誰から聞いたの?」

「倉本綾子さん。あなたの友人も特殊能力を手に入れたと教えてもらった」

何で倉本綾子が俺に特殊能力をと思ったが、謎多き倉本綾子ならその程度のことは当たり前なのかなと一人俺は納得した。

「俺の特殊能力は運否天賦みたいなもので実用性は乏しいのかもしれない」

「運否天賦?」

「ああ、どのような力を使えるかはやってみないと分からないということだ。実際には詳しく俺自身も教えられない。というか、俺自身も自分の特殊能力を把握していない」と俺。その後に生中を開けてからレモンサワーを追加注文した。

 「面白い特殊能力だと思うよ、運否天賦で何が出るか分からない。本当に楽しい特殊能力だと俺は思う」と新本は真面目にそういう。

「大切な話って、俺の特殊能力のことなのか?」

「それもあるけど、お互いの特殊能力について考えてみないかと思って」

「特殊能力について考えてみる?」

お互いの特殊能力について考えてみるという新本の言葉。確かに俺は新本の特殊能力はおろか自分の特殊能力についても詳しくはなかった。

「ああ、俺は動物好きだとは坂本は知っていたな」

「ああ、それは知っているよ」と俺は過去に新本の家で犬とか猫などのペットとしている動物を数頭見たことを思い出した。

「なら、俺の特殊能力を知っているか?」

俺は鈴本で見せた新本の人の心を色で感じる能力を思い出し、「確か、人が何を考えているか感じる能力だろ」と確信を持ちそう言った。

「それだけではなかった。今の俺は動物とも会話できる特殊能力を得たのだ」とそう言う新本のポケットから小さなリスが出てきた。

「リス?」と驚く俺。

「リスのスピネル君だ」と新本はそう言いリスに枝豆をあげた。

新本が動物と喋れる話、動物好きの男がこのような力を手に入れているとは特殊能力の奥深さを俺は肌で感じるのであった。

続く